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「防災に関する仕事をしたい」、そんな思いの人たちはどんな仕事に就くのだろうか。インフラ関連、レスキューや自衛隊、医療関係など、ふと頭に浮かんでくるのは、そんな仕事ばかりだ。しかし、デザインの視点から防災に関わるのがR-proという会社である。本多由季は、R-proの名を一躍全国に知らしめることになった防災ゲーム「いえまですごろく」の発案者だ。芸術大学に進学しデザインの道を進んできた本多は、2011年に東日本大震災が起こらなかったら、おそらく防災の世界に飛び込むこともなかったのではないだろうか。それほどまでに、彼女にとってあの震災は印象的なものだった。

きっかけはフランスで見た「東日本大震災」の恐怖と、その後の日本で感じた「違和感」。

本多
2011年はまだ自分が大学生で、ちょうど春休み。フランス旅行の真っ最中に東日本大震災が起こりました。私はフランスでそのニュースを知ったんですが、向こう(フランス)では、東北だけではなく「日本全体がヤバイ」みたいな雰囲気で取り上げられていて。ものすごく怖かったんですね。そんな風に印象付けられた中、名古屋に帰ってきました。

海外で東日本大震災の鮮烈な印象を与えられた本多は、その後起こる震災の風化に疑問を抱くようになる。

本多
震災が起きた直後は、名古屋でも街頭での募金活動も盛んだった気がします。でも、それは徐々に少なくなっていって。周りの人たちも、あの地震がなかったかのように日常生活を送っていた。それに気付いた時、少し恐怖を感じたんですね。「東北であんなに大変な災害が起こったのに、周りの人たちはなんだか無関心で、意識は何も変わらない」ということに。別に被災地に行って活動しようよ、とか、募金活動しようよ、ってことが言いたいわけじゃなくて、震災のことや災害について日頃から考えたりする空気感があってもいいんじゃないの?って思ったんです。そんな危機感から、大学の卒業制作では、みんなが少しでも災害について意識して何か動き出せるようなものを作りたくて、「防災」をテーマにすることに決めました。

卒業制作の作品作りをしていたその頃、折しもR-proで防災事業「yamoy」の活動が本格的に始まった。本多は「SAKAE CAMP」に参加したことをきっかけに、新卒でR-proに入社することになる。

R-proでデザイナーとして働くということ

まさに「防災の仕事」をするためにR-proに入社した本多。「yamory」の担当者として、2回目の「SAKAE CAMP」や「[ ]to HOME(かっこ とう ほーむ)」を企画していった。そんな中、彼女の大学時代の卒業制作に注目が集まった。

本多
私の大学時代の卒業制作として作ったボードゲームに日本赤十字社さんが興味を持ってくれて、一緒に製品化するプロジェクトが始まったんです。それが、「いえまですごろく」として仕上がりました。この作品、実は中学校の先生と開発しています。「どんな風に表現したら子どもたちに伝わるか」を時間をかけて議論して作り上げました。最初のアイデアが自分だっただけに、世の中に出ていくのはとても嬉しかったです。

ー彼女が産みの親である「いえまですごろく」は、初回生産の1,000個が早々に完売し、追加で生産した1,000個も先日ついに完売。「2,000個が学校の現場などで遊ばれていると思うとすごく幸せ」と本多は話す。そんな彼女は、R-proで働くことをどう感じているのだろうか。

本多
R-proで働いて感じることは、大きく3つあります。まずは、「自由」ですね。会社としての枠組みはあるけれど、それぞれがフリーランスのような感じで仕事が進んでいきます。2つ目は、最初の「自由」に紐づくんですが、個人に任される裁量が大きい。だから、「新しいことがやりたい!」って思った時に、やりたい気持ちだけなく、どうやって進めていったら良いかまで考え抜かなくちゃいけない。そのために、自分が専門とするデザインだけでなく、マーケティングだったり、いろんなスキルが必要だと感じます。すごく大変だけど、これがR-proの醍醐味かな、と思いますね。専門を深めていくというよりも、大きい枠組みを考えて進める。でも、正直まだまだ苦手なんですけどね。

アイデアを考えるだけではなく、そのアイデアの先にいるユーザーや、それを届けるまでの販路まで設計して、初めてデザインが成立する。一般的な会社であれば、明らかにデザイナーの領域を超えている。その理由は、クライアントとの関係性にある。

本多
3つ目はお客さんとの関係性です。R-proは「仕事を取ってきてこなす」っていう感覚じゃないんですよね。クライアントとの距離感が、いわゆる業者というよりパートナーとしてフラットな関係性で仕事をしている感覚です。以前、幼稚園のホームページを作ったんですが、幼稚園の担当者から単純なお褒めの言葉だけでなく、「保護者の方に『この幼稚園の感じが伝わるね』って言われたんだよ」って教えていただけたんです。その時は、クライアントだけでなく、その先にいる相手の気持ちを汲み取れてよかったなと実感しました。でも、クライアントとこういうやり取りができるためにはコミュニケーション能力が必要で、もっと上手くなりたいなと思っているスキルです。

なぜ「いえまですごろく」がヒットしたのか。もちろん、防災に対する意識が高まっていることもあるだろう。しかし、「どうしたら子供たちが楽しく使ってくれるか」「どういう遊びなら、先生たちが学校の教材として使いやすいか」、そんなクライアントやその先の人たちのことを考え抜いたデザインであること・・・彼女がR-proで感じていることを実践した結果であることを実感せずにはいられない。

見えない答えに果敢に挑戦していく防災デザイナー

防災は、正解の無い領域。「いえまですごろく」は、彼女が生み出した防災事業の中の一つでしかない。この答えの見えない世界に果敢に挑戦していく本多は、R-proのデザイナーとして、そして「防災デザイナー」として、今後も邁進していくだろう。最後に、本多は自身の課題も含め、これからのことをこう語ってくれた。

本多
これからさらに「R-pro」の仕事の領域が広がるだろうし、もっと多くの人にR-pro関わってもらうことになると思います。さっき話した「コミュニケーション能力」、もっともっとこのスキルが必要だと感じます。特に、自分の担当する防災事業は色んな分野の人との関わりが必要なので、意識してコミュニケーションをとって、いろんな人を巻き込んでいきたいと思っています。

来年度からは那古野小学校のプロジェクトが始まることも、防災事業にはチャンスだなと思っています。例えば校庭を使ってキャンプとか、防災訓練とか。場所を活用した防災の取り組みを色々やれたらいいなと、今からとても楽しみです。そうやって色々なチャレンジをしながら、R-proがやりたい「社会課題を解決する」を、みんなでやっていきたいですね。